04グローバル時代における日本人女性のキャリア
-グローバル人材育成に向けてのわたしの考え-

ここでは、前ページ「成果主義の組織で働く日本人の意識構造」での考察をふまえながら、
日本企業がグローバル人材を育成するうえでの5つの提案をしたいと思います。

グローバル人材の育成に向けて

提案1:専門職職員の育成

国際機関に勤務する日本人調査協力者からの聴き取り調査から、
満足度が高いのは専門職と財務職という専門性が高い職種に就いている職員であるとわかりました。
日本の民間企業の人材育成はジェネラリストの育成が中心ですが、日本以外の国や組織では、
専門分野での学位歴や関連分野の職務経験がある高度な人材を活用しています。今後、 日本企業が海外の企業と
競合しなければならないことを考えると、専門性の高い専門職職員の育成を急ぐ必要があると考えます。

提案2:中途採用市場の拡充

専門機関に勤務する職員の多くは自己の能力の発揮できる職場で働きたいと考えており、
国際機関での長期勤務に固執していません。専門家の能力を社会全体が有効活用するという観点から、
専門職分野の人材の流動性を高める中途採用市場を拡充させる必要があると考えます。

提案3:早い段階でのグローバル人材の選抜

アンケート調査で、外国人職員との比較から、
外国人職員の方が日本人職員よりもキャリア形成に積極的であることが明らかになりました。
日本人職員の多くは、民間企業に勤務した後、国際機関に勤務していますが、外国人職員の場合は、
将来就く職業分野を早い段階に決め、自己の決定した職業分野でのキャリア形成に積極的に取り組んでいました。
グローバル人材を育成するためには、 専門分野での教育・経験、外国語、コミュニケーション能力などを
習得しなければならず、そのためには長期間の準備が必要となります。
ですので、グローバル化を目指す日本企業は、 早い時期からグローバル人材を選抜する必要があると考えます。

提案4:女性の人材活用

「女性の活用ー雇用機会の均等」でもふれましたが、日本企業の管理職での女性比率は「係長以上」で5%と低く、
日本で女性の人材活用が十分に進んでいるとはいえません。
女性労働の戦力化には時間がかかり、国際機関の場合も男女の雇用均等を実現させるために30年以上の年月を要しています。
北欧諸国では、労働カ不足に対処するために移民労働を受け入れるか、自国の女性を戦力化するかを国民投票で問い、
国民が女性の労働力化を選び、女性が子育てと仕 事を両立させる社会制度を整備させたという事例もあります。
日本の労働力不足は近い将来顕在化してくるはずです。
もし企業が女性を労働力不足の担い手と考えるのであれば、
たとえば育児休業復帰後の先任権の保障を就業規則に明記するなど、
女性の活用を推進させる施策の拡充を真剣に検討する必要があると考えます。

提案5:ワークライフ・バランスの実現

女性の働き方、だけでなく男性についても同様ですが、聴き取り調査で、調査協力者の多くは
ワークライフ・バランスが保たれなければ、長期的に仕事か家庭のどちらかに支障をきたすと
家庭生活の重要性を指摘していました。その含意は、私生活の充実や満足が成果主義組織で働き続ける上での
頑張りにつながるということだといえます。
組織内の人的資源を長期間にわたり有効活用するという観点からも、
組織主導で仕事と生活のバランスを実現できる職場づくりを真剣に検討する必要があると考えます。

まとめ

日本の雇用環境は、 グルーバル化時代に海外を中心に事業転換し、 利益を出していくために大きく変化してきています。
日本の大企業では、 新卒学生を一括採用した後、配置転換を繰り返しながら人材の能力育成を行なっています。
採用試験では、企業は基礎学力と潜在能力があるか、という物差しで選考を行っています。
文系で採用した職員の能力開発においては、 最終学歴での専攻分野は大きな影響を及ぼしていません。
しかしながら、 日本企業がグローバル化人材戦略を推進する限り、
職種別に人材を採用する日は近いのではないかと考えられます。
男性も女性もともに、欧米のビジネスマンと対等に仕事を進めていくためにも、
企業は特定の職種分野で専門教育を受けた人材を積極的に採用していくと考えられます。
日本企業が発展していくにあたっても、やはりジェンダーにおける固定観念を取り払って、
海外の人材と競合できる顕在能力を積極的に習得し活用していく必要があるのではないでしょうか。