04グローバル時代における日本人女性のキャリア
-女性の活用—雇用機会の均等-

ここでは、グローバル時代におけるキャリア形成という面から、日本人女性の国際公務員を例にあげながら、
女性の活用について考えていきます。

女性の雇用機会の均等について

国連共通システム内の機関に働く専門職と管理職の女性職員は、2009年末時点で1万人以上おり、
全体の40%以上を占め、管理職においても女性は28%を占めています。
日本の場合、国家公務員行政職第1種在職者に占める女性の割合は16.7%であり
国際機関の場合と比較すると、女性職員の比率は半分以下になっています。
【参照:国連共通システムに働く職員の上位出身国名とその割合
Personal Statistics Data as at 31 December 2009(CEB/2010/HLCM/HR/24)】

また、従業員が100名以上の民間企業で、係長以上の役職に就いている女性は4.9%にすぎません。
このように日本の状況と比較すると、国際機関では、非常に多くの女性が組織の柱として働いていることがわかります。
なお、ここで民間企業レベルの女性比率を比較した理由は、このあと説明しますが、
日本人国際公務員は男女ともに、民間企業出身者の割合がもっとも多かったためです。
【参照:国連共通システムに働く専門職・管理職にある女性職員数とその割合
Personal Statistics Data as at 31 December 2009(CEB/2010/HLCM/HR/24)】

国際機関では「女性の地位向上」動きを背景に、国際機関が女性の雇用を推進し、
そのために努力目標を立て、同じ条件であれば女性を優先的に採用し、昇進させています。
たとえば、国連事務局の場合、専門職のポストに就く女性の職員比率を50%にする
目標を立て、1994年には30%だった女性の比率が2003年には37%に、2008年には38%に上昇しました。

UNICEFの場合も、専門職および管理職ポストに就く女性の比率を50%に高める目標を立て、
女性の比率は1994年には38%でありましたが、2000年には41%に、2007年には49%まで上昇し、
2009年末には表1からわかるように、50%と、均等雇用の目標を達成しました。

採用・昇進・配置管理について

どの組織であれ、職員の採用に際して、優秀な人材を選考することは採用の基本です。
国際機関における職員の採用は、民間企業の場合と多少異なるそうです。国際機関では、
共通する採用方針は3つあり、機関により方針は多少異なるものの、1つめは募集する専門分野の能力、
経験がもっとも高い水準の候補者を採用すること、2つめは、職員数を機関への分担金割合に応じた
割合で採用すること、3つめは同程度の能力であれば、女性を優先的に採用し、昇進させることです。

日本の民間企業では、人事部が職員の配置を決定し、職員の昇進審査においても人事部の影響が大きいといえます。
昇進の際には、評価対象として「能力評価」「業績評価」がもっとも重視されますが、同時に「在籍年数」や「人柄」も重視されます。

データが少し古くなってしまいますが、厚生労働省が実施した「平成14年雇用管理調査」によると、
転勤を一時的に免除する精度があると回答した企業は3%にすぎなかったとあります。
他方、90%の企業は転勤の一時免除制度を設けておらず、残りの7%は無回答とのことでした。
この調査から、企業に勤務する職員のほとんどは、人事部の意向に従って転居をともなう配置転換だけでなく
在籍年数や年齢などの属人的要素も評価の対象になっているということがわかります。
これはつまり、従業員が人事部の判断に反する意思を示すことは、そのあとの、昇進に大きな影響を与えることを意味します。
一方、国際機関では、昇進・配置転換においては本人の意思が最優先されます。専門職以上の空席となった
ポストはすべて全世界に公募されるため、昇進を望む職員は上位の空席ポストに応募し、選考されるよう
自らの能力を高める必要があります。職員は必要と考えれば、同じ職位の異なるポストで経験の幅を広げたあとに
上位の空席ポストに応募し、昇進をはかるなど自らの意思で、将来の職業設計をおこなって、
その目的に到達するために努力をおこなう必要があります。

出産休暇

女性職員のための制度として産前後合計4ヶ月(16週間)の出産休暇があります。
この期間の給与は100%保障され、出産休暇期間中も1月に2.5日の有給休暇が別に与えられます。
そのため、職員は過去の有給休暇分と上記出産休暇を組み合わせて、 職場復帰まで通常、数ヶ月間、
通常の給与を受けながら出産と育児に専念することができます。
このように、国際機関には、女性職員が出産後も働き続けられる制度が整っており、
女性の出産休暇の取得は権利であると就業規則に明記されています。加えて、その運用は職場に浸透しており、女性職員は
これらの権利の行使は当然であると考え、出産後に仕事との両立が困難という理由で離職する職員はほとんどいないとのこと。
他方、女性が育児休業を取得し、第1子を出産した後に継続就業している割合は38%に過ぎず、
残りの62%は退職しているという事実もあります。