04グローバル時代における日本人女性のキャリア
-成果主義の組織で働く日本人の意識構造-

国連共通システムで働く人々にアンケート・聞き取り調査をおこないました。
成果主義の組織で働く日本人の意識構造について、わかったことをまとめました。

成果主義の組織で働く日本人の意識構造についての考察

アンケー ト調査でも同様な結果が得られましたが、「日本での勤務経験と勤務組織」の表にあるように、
聞き取り調査での調査協力者の約90%は日本で働いた経験があり、そのうち40%以上は民間企業に動務した後に、
国際機関に転職していました。
ここではアンケートおよび聴き取り調査を通じて明らかになった日本人職員の意識構造の分析結果をふまえて、
日本企業がグローバル人材育成のために人的資源管理面で重要となる取り組みや問題点を、
わたしの意見を交えながら検討していきたいと思います。

考察1:働くうえでもっとも重要な要素は職務満足

アンケート調査から明らかになったのは、働くうえでもっとも重要な要素は職務満足であるということ。
わたしが行ったアンケート調査の結果からは、高い職務満足を持つ職員ほど職位が高く、
かつ職務満足と総合満足は非常に高い相関関係にありました。
職種分析では、専門職職員および財務職職員の職務満足度が非常に高かったです。

考察2:日本の民間企業の職場教育のレベルが高い

聞き取り調査からわかったことは、日本の民間企業の職場教育のレベルが高いということ。
日本での勤務経験のある男性調査協力者は、日本で受けた教育レベルは高く、
国際機関での職務に役立っていると高く評価していました。
他方、女性調査協力者の日本での職場教育に対する評価は低かったです。
これらの女性が日本で働いた時期は男女雇用機会均等法施行以前であるとはいえ
「女性の活用」の問題は日本企業が検討しなければならない大きな課題であるといえます。

考察3:給与の不満は少ない

アンケート調査、聞き取り調査からわかったこととして、給与の不満は少ないということ。
国際機関の給与はドル建で支払われており、円に換算すると決して高いとはいえません。
実際、40%以上の男性職員は、転職により給与が2〜5割減少しましたが、給与の減少による不満は見られませんでした。
調査では、男性職員、女性職員共に職場が提供する「生活満足度」すなわち「生活の質」を評価していました。
満足の理由として、特に男性は労働時間の減少を挙げていました。

考察4:転職に積極的

アンケート調査からわかったことは、転職に積極的であるということ。
専門分野での高い能力が要求されるWHO、ILO、世界銀行などの専門機関に勤務する回答者の40%は、
機会があれば「自分の能力・知識を他の職場で活かしたい」と転職に積極的でした。
専門性が高い職員は、自分の能力・経験を活かす機会があれば、
給与は多少低くなっても転職に積極的な姿勢を見せています。

考察5:親の世話・介護問題

日本にいる親の世話・介護の問題について関心を持つ人が多数いました。
アンケート調査の回答者の平均年齢が43歳であったということもあり、
男性の3人に1人は日本に戻り働くことを真剣に考えたことがあると回答しました。
しかし、日本で適職が見つからない、日本の職場環境で働く決心がつかないなどの理由で最終的には離職していませんでした。

考察6:子供の教育問題

子供の教育の問題についても関心が高いということがわかりました。
子供の教育に関わる問題とは、幼少期から海外で長期間生活していると、
日本語、日本人としての考え方・常識を身につけることが難しくなることから、
親が子供に日本で日本人としての価値観を身につけさせたいと考える傾向にあります。
一般的に親は、子供に日本人としての価値観を身につけさせると 同時に、将来の選択肢を多く持たせたいと考えます。
アンケート調査および聴き取り調査では、子供を持つ調査協力者から子供の教育に関する問題の指摘が多かったです。

考察7:海外生活での問題点は言語よりも、生活面

アンケート調査でわったことは、赴任地で最も苦労する問題は医療施設へのアクセス、
安全の確保、食べ物などー般的な事柄であり、
現地で使われる言語やローカル・スタッフとの関係ではないことが明らかになりました。